State of Drupal プレゼンテーション(2026年9月)
この記事は以下の記事を翻訳し、掲載しています。
出典:State of Drupal presentation (September 2026)
Drupalの実力は今や、世間の評判をはるかに上回っています。このギャップを埋めることこそが私たちにとって最大の課題であり、それがDrupalCon Rotterdamでの私の基調講演の主なメッセージでした。
2年余り前、私はDrupal Starshotを立ち上げました。その理由は、私たちがかつてのようにイノベーションを起こせるのか、確信が持てなかったからです。結果として、私たちにはそれができるとわかりました。
StarshotはDrupal CMSとなりました。Drupal CMSは、サイトテンプレート、レシピ、Drupal AI、Drupal Canvasなどを組み合わせ、Webサイトの構築をより簡単にします。
その取り組みと並行して、Drupalコアは開発者にとってより高速で優れたフレームワークになりました。Drupalコアが強化されることでより良いDrupal CMSを構築することができ、またDrupal CMSの構築がDrupalコアのさらなる改善を促してきました。
残念ながら、Drupalコミュニティの外にいる多くの人々は、今日のDrupalに何ができるのかをまだ目にしていません。ロッテルダムで私は、私たちがどれほど進歩してきたのか、そして次にどこへ向かうのかを紹介しました。さらに、Drupalがいかに素晴らしくなったかをより多くの人々に知ってもらうための、アドボカシープログラムを立ち上げました。
基調講演を見逃した方は以下の動画を見るか、スライド資料(86MB)をダウンロードすることができます。
より多くの人々にDrupalを届けるための新たな手段
基調講演の最初のパートでは、多言語サイト、JavaScriptフロントエンド、ヘッドレスCanvas、そしてDrupal AIの改善点を紹介しました。
Drupalは以前から充実した多言語機能を備えていましたが、強力な新しいページビルダーであるDrupal Canvasは、まだ多言語サイトに対応していませんでした。今回、Canvasに多言語サポートを追加しただけでなく、あらゆる多言語サイトをより簡単にセットアップできるようにしました。
Reactは世界最大級の開発者コミュニティを持っています。Drupal CanvasのコードコンポーネントはReactで記述されており、私たちはフロントエンドのJavaScript開発者がすでに使い慣れているツール、パターン、ワークフローを中心に開発者体験を設計しました。開発者はDrupal固有の概念や規約を学ぶ必要はなく、最新のAI支援ワークフローを含めて好みの開発ツールを使うことができます。私たちはこの体験を改善し続けており、Drupalの開発者層よりもはるかに大規模なReact開発者たちにとって、Drupalで開発するためのハードルが下がってきています。
DrupalConでは、同じモデルをDrupal Canvas Headlessへと拡張したことを発表しました。開発者はDrupalでコンテンツを管理しながら、Next.js、Astro、TanStack、Angular、Nuxtといったフレームワークを使ってフロントエンドを別途構築できるようになっています。編集者は、これまでどおりDrupal Canvasで視覚的にページを編集できます。Drupal上でページを構築し、そのページがフロントエンドでどのように表示されるかを正確にプレビューできるのです。
これにより、重要なトレードオフが変わります。チームはもはや、モダンなJavaScriptフロントエンドとDrupal Canvasの視覚的な編集体験のどちらかを選ぶ必要はありません。両方を手に入れることができるのです。その結果、より多くの開発者、より多くのフロントエンドアーキテクチャ、より多くの種類のプロジェクトにDrupalの門戸が開かれます。
Drupal AIは非常に速いスピードで進化しており、その話だけで基調講演がまるごと終わってしまうほどです。そこで今回は、誰もがDrupal AIを自分で体験できる新しいDrupal AIデモを公開しました。あらかじめ設定済みのため、Drupal AIで何ができるのかを簡単に試したり、顧客に見せたりすることができます。
最新のDrupal AIでは、質問をするとサイトのコンテンツに基づいた回答を得ることができます。さらに、ブランドガイドラインに照らしたコンテンツの監査、コンテンツの翻訳や分類、AIによるページやReactコンポーネントの構築なども可能です。MCPを通じて、AIアシスタントがDrupalの外部からDrupalのコンテンツを扱うこともできます。
私が最もワクワクしているのは、これらすべてを支える基盤です。Drupal AIは、DrupalをAIハーネスへと変えます。組織は、AIモデルを構造化されたコンテンツ、ツール、ワークフローに接続しながら、権限、ガードレール、オブザーバビリティ、利用量の計測、そしてAIモデルの選択を通じて、AIを自らの管理下に置き続けることができます。
Drupalの機能を他のソフトウェアに開放する
基調講演の2つ目のパートでは、もう一つの重要な変化に注目しました。それは、AIアシスタントによって、人々がDrupalを扱うための新しい方法が生まれつつあるということです。
あるデモでは、編集者はAIアシスタントにページを非公開にするよう頼むだけでした。どこをクリックすればよいのかを知る必要も、Drupalのリビジョン、モデレーションワークフロー、権限について理解する必要もありませんでした。AIアシスタントは編集者の意図をくみ取って操作を実行しましたが、その操作を管理していたのはあくまでDrupalです。Drupalは、編集者にそのページを非公開にする権限があるかを確認し、手作業で行った場合とまったく同じようにサイトの公開ルールを適用しました。
デモの詳細を知りたい方のために、このデモに携わったスコット・ファルコナー氏が舞台裏を解説する動画を録画しています。自分でセットアップする方法、内部で何が起きているのか、そしてこの取り組みにどのように参加できるのかが紹介されています。
このデモはToolモジュールをベースに構築されています。私は、これがDrupal開発者にとって最も注目すべきモジュールの一つだと考えています。Drupalのモジュールには、コンテンツの公開、ユーザー管理、メディア処理、設定の変更など、すでに何千もの便利な機能が含まれています。Toolモジュールは、開発者がそれらの機能を公開するための標準的な方法を提供し、AIアシスタントやその他のソフトウェアがそれらを発見して利用できるようにします。
現状では、既存の機能をツールとして公開するには、追加で多くのコードが必要になる場合があります。私自身のアルバムモジュールはツールを公開していなかったため、既存の機能をAIアシスタントから利用できるようにするのに、約1,000行のコードを追加する必要がありました。
しかし、一度ツールが利用可能になると、その価値はすぐに明らかになりました。MCPサポートを追加したことで、私のサイトにある10,000枚以上の写真の管理方法はすでに変わりました。以前は多くの時間がかかっていた作業も、今ではAIアシスタントを使ってはるかに速く正確に行えます。その一方で、コンテンツ、権限、ワークフローは引き続きDrupalが裏側で管理しています。
この経験は、私が「AIとCMSの大いなるアンバンドリング」で書いたことを改めて裏付けるものでした。AIが実行作業をより多く担う一方で、Drupalはコントロールレイヤーであり続けます。今後、サイトの一部をAIアシスタントを通じて管理したいと考える組織は増えていくでしょう。AIは、Drupalが提供する構造、ガバナンス、セーフガードを手放すことなく、複雑なタスクをはるかに速く簡単にすることができます。
私は、いずれ何千ものモジュール開発者が同じように自分の機能を公開したいと考えるようになると信じています。そのため、マット・グラマン氏と協力して、これをはるかに簡単にする取り組みを進めています。マットは、開発者が既存のPHPメソッドをアトリビュートを使ってツールとして公開できるようにする、Tool APIの変更を開発しています。
考え方はシンプルです。既存のメソッドにPHPアトリビュートを追加して、その名前、目的、入力、出力を記述するだけです。私のアルバムモジュールでは、約1,000行あった連携コードが、約20個のアトリビュートになりました。私のサイトではすでにこの実験的なブランチを使用しており、Toolモジュール本体へのマージに向けて取り組んでいます。
そしてこれはAIだけの話ではありません。同じツールを、AIアシスタントがMCP経由で呼び出すことも、他のアプリケーションがHTTP経由で呼び出すこともできます。また、JavaScriptコンポーネント用のスキーマを生成したり、DrupalモジュールをECA、FlowDrop、Maestroといったワークフローシステムに接続したりするためにも使えます。以下の動画では、FlowDropが私のアルバムモジュールで公開された機能を使用している様子をご覧いただけます。
Drupalについて、もっと声を上げよう
基調講演の最後のパートでは、Drupalの実力と評判のギャップの話に戻りました。Drupalがどれほど大きな進歩を遂げても、それだけで人々やAIエージェントがDrupalをどう捉えるかが、自然に変わるわけではありません。例えば、私が6月にテストしたAIコーディングエージェントは、Drupalを評価する際にDrupal CMSやサイトテンプレートについてまったく触れませんでした。
ここ数年、私個人としてはDrupalのイノベーションを加速させることに力を注いできました。その取り組みは実を結び、製品として確かな勢いが生まれています。今後は、方程式のもう一方の側にもっと目を向けていきます。つまり、私たちが作り上げたものを人々に見てもらい、何が変わったのかを理解してもらい、それがなぜ重要なのかを知ってもらうことです。

そこで私は、Drupalアソシエーションが主導するDrupalアドボカシープログラムを発表しました。
Drupalにはすでに貢献クレジットの仕組みがあります。これは、Drupalに貢献する人々と、その活動を支援する組織を評価するものです。企業にとっては、このクレジットがDrupalマーケットプレイスでの露出度を左右する要素にもなっています。これまで私たちは、技術的な貢献や資金面での支援を評価することに比べて、アドボカシー活動を評価することはあまり得意ではありませんでした。
新しいDrupalアドボカシープログラムはそれを変えます。今後はアドボカシー活動も貢献クレジットの対象となり、既存のDrupalコミュニティの外にいる人々に届ける活動は、より大きく評価されます。
Drupalの実力と評判のギャップを埋めたいのであれば、すでにDrupalをよく知っている人々に向けて話すだけでは不十分です。外部イベントでの講演、より幅広い媒体での記事、導入事例、デモ、チュートリアルなど、今日のDrupalに何ができるのかを人々に知ってもらうための活動をもっと増やす必要があります。
Blue Drop Labsはその好例です。DriesNoteの翌日、彼らはDrupal CMSとCanvas HeadlessによるWebサイト構築についての記事を公開しました。プロジェクト自体はすでに稼働していましたが、彼らはその成果をすばやく他の人が学べるストーリーへと仕立て、編集者と開発者が今日どのようにDrupalを使っているかを示すデモも添えました。
これこそが、私の言う「もっと声を上げる」ということです。素晴らしいDrupalの取り組みは、すでにたくさん行われています。私たちはそれを、もっと上手に世界へ発信していく必要があります。
実は、アドボカシープログラムの発表には少し緊張していました。私たちは長い間、Drupalの実力と評判のギャップに頭を悩ませてきましたが、それを認めるだけでなく、もっと行動する必要があると感じていました。貢献クレジットでアドボカシー活動に報いることは、インセンティブを変えるための具体的な方法でしたが、コミュニティがどう反応するかはわかりませんでした。
結果的に、これは基調講演の中で最も好評を得た発表の一つとなりました。その反応から、人々がこのギャップを認識するだけでなく、それに対して行動を起こす準備ができていると確信することができました。
Drupalのアドボカシークレジットを獲得する方法を確認し、あなたのアドボカシー活動を登録してください。

私のお願いはシンプルです。Drupalについて、特にコミュニティの外にいる人々に向けて、もっと声を上げてください。Drupalに誇大な宣伝は必要ありませんが、より充実した公の実績は必要です。今日のDrupalに何ができるのかを、実例を通して示してくれる人がもっと必要なのです。
今回のプレゼンテーションとデモの成功に貢献してくださったすべての方に、心より感謝申し上げます。特にBálint Kléri、Christoph Breidert、Gábor Hojtsy、Lauri Timmanee、Matt Glaman、Michael Lander、Pamela Barone、Shibin Das、そしてDrupal AIパートナーの皆さんに深く感謝します。他にも多くの方々が間接的に貢献してくださり、今回の実現が可能となりました。もしお名前が漏れていましたら、ぜひご連絡ください。
— ドリス・バイタルト
