State of Drupalプレゼンテーション(2024年9月)

この記事は以下の記事を翻訳し、掲載しています。
出典:State of Drupal presentation (September 2024)

DrupalCon Barcelona 2024 DriesNoteプレゼンテーション

先週、約1,100人のDrupalユーザーがDrupalConのためスペインのバルセロナに集結しました。良き伝統に従い私は、一般に"Driesnote"と呼ばれているState of Drupal基調講演を行いました。見逃してしまった方は動画で見るか、スライド資料(177 MB)をダウンロードすることができます。

基調講演では、DrupalConポートランド2024で発表した野心的な構想であるDrupal Starshotの最新情報をお伝えしました。この製品は当初ジョン・F・ケネディ大統領の「ムーンショット計画」にインスパイアされ「Drupal Starshot」と呼ばれていましたが、現在は正式にDrupal CMSと名付けられています。

Drupal CMSの目標は、コードなしでのウェブサイト構築の標準を設定することです。それにより、Drupalの良さであるパワーと柔軟性を損なうことなく、マーケター、コンテンツクリエイター、サイトビルダーなどの技術者でないユーザーでも簡単にデジタルエクスペリエンスを重視したWebサイト作成ができるようになります。

4ヶ月の進捗報告


アップデートされたDrupalのブランドとコンテンツを備えるDrupal.orgフロントページのプレビュー

 

ケネディがNASAに8年を費やした一方で、私はDrupal CMSの最初のバージョンをわずか8ヶ月で完成させるという目標を立てました。既にDrupalConポートランドから4ヶ月が経ち、半分を過ぎたことになります。

そこで基調講演では、進捗状況を共有し、これまでに構築したものについて35分間のデモを行いました。デモでは、架空の人物であるマーケターのサラが、開発者からは最小限のサポートだけを受けてわずか数時間で強力なウェブサイトを構築した話を紹介しました。その過程で私は以下の主要な革新を紹介しました。

  1. 新しい市場向けの新しいブランド: マーケターと開発者の両方に魅力的となるDrupal.orgのブランドリフレッシュ。トップページは完成していてnew.drupal.orgで見ることができ、今後数ヶ月でさらにページが公開される予定です。
  2. 体験版:新規ユーザーに対して長らく立ちはだかってきた導入時の障壁を排除した、ワンクリックでDrupal CMSを試せる体験版。WebAssemblyを使用しているため全てブラウザ内で動作します。サーバーをインストールしたり管理したりする必要はありません。
  3. 改善されたインストーラー:ユーザーがレシピをインストールできるインストーラー。レシピは、一般的なウェブサイトのニーズに応じたモジュール、設定、デフォルトコンテンツを組み合わせ事前構築された機能で、長年にわたって培われた専門知識を繰り返し使える共有可能なソリューションとしてまとめられたものです。
  4. イベントのレシピ:以前は経験豊富な開発者が1日かけていたイベントのWebサイトの構築が、非開発者の数回のクリックによって可能になります。
  5. レシピに対するProject Browserのサポート:ユーザーはProject BrowserでDrupal CMSのレシピを閲覧し、数秒でインストールすることができます。
  6. 1つ目のドキュメントページ:エンドユーザー向けに新たに作成されたドキュメント。明確で効果的なドキュメントはDrupal CMSの成功に不可欠なため、まず私たちが目指す品質とスタイルの基準となるページを1つ作成することから始めました。
  7. サイト構築のためのAI:コンテンツタイプの作成、フィールドの設定、ビューズやフォームなどの構築が可能なAIエージェント。これにより、Drupalを使ったウェブサイトの構築と管理が大きく変わります。
  8. 責任あるAIポリシー:責任あるAI開発を保証するため、責任あるAIポリシーを作成しました。詳細は今後のブログで共有しますが、ポリシーは4つの主要な原則に焦点を当てています。それは人間が関与すること、透明性、入替可能な大規模言語モデル(LLM)、明確なガイドラインです。
  9. SEOレシピ:Drupalサイトを検索エンジン向けに最適化するために不可欠なモジュールを組み合わせて設定します。
  10. 開発中の14のレシピ:イベントやSEOのレシピに加えて、さらに12のレシピがDrupal認定パートナーの協力を得ながら開発中です。各レシピは私たちの製品戦略に基づいた一般的なマーケティングユースケースに対応しています。イニシアティブリードというキーノートでは、いくつかのトラックでその過程と進捗の両方を紹介しました。DrupalConの後、さらに多くのレシピの開発を開始し、追加のコントリビューターを募ってこの取り組みに参加してもらう予定です。
  11. AI支援によるコンテンツ移行:AIがウェブサイトをクロールし、構造化されていないHTMLを構造化されたDrupalコンテンツタイプにマッピングするなど、複雑なタスクを処理します。これによりウェブサイトの移行が迅速かつ容易になります。これはウェブサイトの移行においてゲームチェンジャーとなるかもしれません。
  12. エクスペリエンスビルダー:コンテンツ作成者やデザイナー向けの、まったく新しいアウト・オブ・ザ・ボックスツールの初期プレビューで、レイアウトデザイン、ページ構築、基本的なテーマ設定、コンテンツ編集ツールを提供します。DrupalConのステージで進捗を紹介するのは今回が初めてです。
  13. Reactによる将来性のある管理UI:Reactを使用してDrupalのバックエンドUIをモダン化するための戦略。
  14. 「Adopt-a-Document」イニシアティブ:Drupal CMSの包括的なドキュメントを作成するための戦略と資金調達モデル。成功すれば、Drupalの他の領域にもこのモデルを拡大できると期待しています。詳細についてはdrupal.orgでの発表をご覧ください。
  15. グローバルドキュメントリーダー:Drupal Associationは、Drupal CMSにとどまらずDrupalのドキュメントをあらゆる側面から責任を持って管理担当する専任のドキュメントリーダーを雇用することを約束しました。

私のプレゼンテーションに対するフィードバックは、オンラインでも現地でも素晴らしいものでした。会場は活気に満ち、ポジティブな雰囲気に包まれていました!ぜひ録画を見ることをお勧めします。

参加者は特にAIの能力、エクスペリエンスビルダー、レシピに興奮していました。これらの機能はDrupalに変革をもたらすものです。私も彼らの熱意に共感します。

これらの機能の多くは、開発者ではないユーザーを念頭に置いて設計されています。私たちの目標は、従来のユーザー層を超えてDrupalの普及を図り、これまで以上に多くの人々に利用してもらうことです。

リリース計画

私たちのローンチ計画では、Drupalの次の誕生日である2025年1月15日にDrupal CMSをリリースすることを目標にしています。これはDrupal 7のサポート終了からわずか数週間後でもあり、一つの時代の終わりと次の時代の始まりとなります。

次のマイルストーンは2024年12月9日~11日に開催されるDrupalConシンガポールです。開催まで3か月を切りました。それまでにリリース候補版を用意したいと考えています。

DrupalConから戻り重要なマイルストーンとなる日付も決まった今、この先数週間の間に調整し計画すべきことがたくさんあります。最新情報をご期待ください。

貢献の呼びかけ

これは野心的です。しかし私たちが協力すれば達成可能です。だからこそ私は皆さんにDrupal CMSへの参加を呼びかけています。レシピの作成、エクスペリエンスビルダーの強化、AIエージェントの作成、テストの記述、ドキュメントの改善、ユーザビリティテストの実施など、貢献し、違いを生み出す方法は数えきれないほどあります。 参加する準備ができている方は、https://drupal.org/starshotにアクセスして参加方法をご確認ください。

Thank you

この取り組みには名前を挙げきれないほど多くの方々が関わってくれましたが、特に毎週密接に協力してくれているDrupal CMSリーダーシップチームのメンバーCristina Chumillas(Lullabot)、Gábor Hojtsy(Acquia)、Lenny Moskalyk(Drupal Association)、Pamela Barone(Technocrat)、Suzanne Dergacheva(Evolving Web)、Tim Plunkett(Acquia)に感謝の意を表したいと思います。

私のプレゼンテーションのために集結してくれたデモチームの以下の皆さんにも特に感謝の意を表したいと思います。
Adam Hoenich (Acquia)、Amber Matz(Drupalize.me)、Ash Sullivan (Acquia)、Jamie Abrahams (FreelyGive)、Jim Birch (Kanopi)、Joe Shindelar (Drupalize.me)、John Doyle (Digital Polygon)、Lauri Timmanee (Acquia)、Marcus Johansson (FreelyGive)、Martin Anderson-Clutz (Acquia)、Matt Glaman (Acquia)、Matthew Grasmick (Acquia)、Michael Donovan (Acquia)、Tiffany Farriss (Palantir.net)、Tim Lehnen (Drupal Association)

また、Drupal CMSトラックのリーダーや貢献者の方々の開発作業にも感謝いたします。さらに、Drupalコアコミッター、Drupal Associationのスタッフ、Drupal Associationの理事会、およびDrupal認定パートナーの継続的なサポートとリーダーシップに感謝いたします。 貢献が認知・評価されるべき人や組織がとても多く、全てを個別に列挙することはできませんが、それは誰かを見落としてしまうリスクを避けるためでもあります。皆さんの努力に深く感謝しています。

最後に、DrupalConバルセロナの成功に協力してくださったすべての方々に感謝いたします。素晴らしいイベントでした!

— Dries Buytaert